「スペシャルティコーヒー」現在流通しているコーヒーの中で特に品質が高いと評価されたコーヒーのことを指します。では具体的にはどのようなコーヒーのことを指すのでしょうか?この記事ではスペシャルティコーヒーの定義や成り立ちについて解説します。
スペシャルティコーヒーの定義
スペシャルティコーヒー協会(SCA: Specialty Coffee Association)は、スペシャルティ コーヒーを「消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること」としています。
また「コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。(From seed to cup)」とも言及しているため、単純な生豆の品質だけでなく、サプライチェーン全体に関連するものとして捉えています。
そのためスペシャルティコーヒーの特徴の一つとして、トレーサビリティ(追跡可能性)がしっかり確立され、コーヒー豆の生産地や栽培方法、加工プロセスなどが明確で、消費者がその情報を確認できることが挙げられます。
この透明性も、スペシャルティ コーヒーの高品質を保証する一因となっています。
スペシャルティコーヒーと一般的なコーヒーとの違い
一般的にスーパーなどで安価で流通しているコーヒー豆のことをコマーシャルコーヒーやコモディティコーヒーと呼びます。
これらは商品先物取引市場で取引されているコーヒー豆で、世界でもっとも流通しているコーヒーと言えます。
当然これらは大量生産されることが多く、トレーサビリティも厳格ではなく、品質にばらつきがあることが特徴です。
一方、スペシャルティコーヒーは、85点以上のカッピングスコアを持ち、トレーサビリティが確保されていることが条件です。
生産地が明確で、しっかりとした品質管理のもと、最高の状態で消費者に届けられるようにされているので、その風味や味わいに一貫性と高いレベルを期待できます。
ただし、その価格もコモディティコーヒーと比較してかなり高めです。
スペシャルティ コーヒーの歴史
スペシャルティ コーヒーの起源
スペシャルティ コーヒーの概念は、1970年代にエルナ・クヌッセン(Erna Knutsen)によって提唱されました。彼女は、コーヒー豆の品質において特別な特徴を持つロットを「スペシャルティ」と呼び、これが現在のスペシャルティ コーヒーの概念の基礎となりました。
1982年、スペシャルティコーヒー協会アメリカ(SCAA: Specialty Coffee Association of America)が設立され、スペシャルティ コーヒーの品質基準と認知度が向上しました。SCAAは、コーヒー業界全体の品質向上を目指し、さまざまな教育プログラムや品評会を開催しています。
スペシャルティ コーヒーの発展
カップオブエクセレンスをはじめとした品評会の開催
1999年に始まったカップオブエクセレンス(Cup of Excellence)は、世界中の最高品質のコーヒーを評価する品評会です。この品評会では、厳格な審査基準に基づいて評価されたコーヒーが高値で取引されるため、生産者にとって大きなインセンティブとなります。これにより、コーヒーの品質向上が促進されました。
シングルオリジン
それまでも同一の国や地域で生産された豆をストレートと呼んでいましたが、実際にはトレーサビリティが明確ではないものが多かったようです。
それが上記のカップオブエクセレンスをはじめとした品評会などが開催されるようになり、より特定の農園や栽培ロット、生産者等を識別できるような豆が増え、このようなトレーサビリティが確立された豆をシングルオリジンと呼ぶようになりました。
サードウェーブコーヒー
サードウェーブは、1990年代から2000年代初頭にかけてアメリカで始まったもので、コーヒーの歴史上3度目の潮流とされています。
この運動は、トリシュ・ロスギブ(Trish Rothgeb)が提唱し、コーヒーの品質や生産過程への関心を高めました。
特徴としては、
- 浅煎り
- ハンドドリップ
- シングルオリジン
- 直輸入
が挙げられます。
日本においても、2015年にブルーボトルコーヒーなどの象徴的なカフェが上陸し、サードウェーブコーヒーのブームが広がりました。
スペシャルティコーヒー現在の状況とトレンド
現在、スペシャルティコーヒーは世界中で広く受け入れられ、多くの人々がその風味や味わいを求めています。特に、都市部ではスペシャルティ コーヒーを提供するカフェやロースタリーが増加しており、消費者は高品質なコーヒーを手軽に楽しむことができるようになりました。
サードウェーブコーヒーが全盛期の頃は浅煎りの豆が主流でしたが、現在では浅煎りから深煎りまで幅広いコーヒー豆を提供しているカフェやロースターが多くなっています。
スペシャルティコーヒーの品質基準と評価方法
スペシャルティ コーヒーの品質基準は、SCAによって厳格に定められています。
これには、生豆の欠点数、カッピングスコア、風味の一貫性などが含まれます。
カッピングスコアは、アロマ、フレーバー、アシディティ、ボディ、アフターテイストなどの要素を評価するもので、100点満点中85点以上を獲得したコーヒーがスペシャルティ コーヒーとして認められます。また、トレーサビリティが確保されていることも重要な基準となっています。
スペシャルティ コーヒーの生産と品質管理
農地、気候、土壌
スペシャルティ コーヒーは、特定の環境条件が整った地域で栽培されます。高地での栽培が一般的で、適度な降雨量と豊富な日照が必要です。また、土壌の質も重要で、有機物が豊富な土壌が好まれます。
コーヒーチェリーの加工
収穫されたコーヒーチェリーは、ウェットプロセスやドライプロセスなどの加工方法を経て、生豆となります。これらのプロセスは、コーヒーの風味に大きな影響を与えるため、適切な管理が求められます。
運送・保管
コーヒー豆の品質を維持するためには、適切な運送と保管が必要です。湿気や温度の変化を避けるため、専用のコンテナや冷蔵施設を利用することが一般的です。
焙煎(ロースト)
コーヒーの焙煎は、その風味を最大限に引き出すための重要な工程です。焙煎度合いによって、コーヒーの味わいが大きく変わります。浅煎りはフルーティーな風味が強く、深煎りは濃厚でビターな味わいが特徴です。
スペシャルティ コーヒーの市場
日本国内外の市場規模と成長
スペシャルティコーヒーの市場は、世界中で拡大を続けています。特にアジアや北米、ヨーロッパでの需要が高まり、多くの消費者がその品質を求めています。日本国内でも、スペシャルティコーヒーを提供するカフェやロースタリーが増加しており、消費者の関心が高まっています。
課題
2024年現在、ベトナム・ブラジルの天候不順に伴う不作や円安の影響でコーヒー豆全体が高騰しています。
スペシャルティコーヒーに関してはアジア圏での急速な需要拡大もあり価格が上昇している傾向にあるようです。
その需要拡大の影響もあってか、有名な地域であれば名前だけで売れてしまうような現状が品質の低下を招いている、などの噂もあります。
また、これは以前からも言われ続けていることですが、生産者に対する適正な報酬が行き渡らず、持続可能な生産が困難だとも言われています。
これらの課題を克服するために、生産者と消費者の双方が協力し、持続可能なコーヒー生産を推進することが求められます。
まとめ
スペシャルティコーヒーは、その風味や香り、味わいで、多くの人に愛されています。
現在のスペシャルティコーヒーの需要拡大や様々な要因による価格高騰を受けて、ロースターやカフェは様々な工夫を強いられています。
ですが、それによって新しい動きが増えて新しいコーヒー文化や刺激が生まれてくる可能性もあるかもしれません。
これからも美味しいコーヒーを楽しみながら、コーヒーの生産者やロースターを応援し、私たちのコーヒーライフをさらに豊かにしていきましょう!